
日本企業は、生成AIの導入に出遅れている──。そうした認識は、ビジネスの現場でも広く共有されつつあります。法規制やガバナンスへの慎重な姿勢、現場への浸透の難しさなど、理由はさまざまに語られてきました。
ですが本当に、日本は「遅れている」のでしょうか。
近年の調査では、実は導入そのものは他国と遜色ない水準で進んでいるという結果も出始めています。にもかかわらず、成果が出ていないと感じている企業が多いのはなぜなのか。このギャップに、生成AIを巡る日本企業特有の“構造的な問題”が見え隠れしています。
本記事ではその背景をひもときながら、成果を上げている企業とそうでない企業の決定的な違い、そして今、業務改革やDXを担う立場として見直すべき視点について考察していきます。
「日本はAIで遅れている」は思い込みだった

「日本企業は生成AIの導入が遅れている」というイメージは根強く残っていますが、実際にはそうした印象と実態には大きなズレがあります。特に大手企業においては、海外と同等のスピードで導入が進んでいるという調査結果も出始めています。
この章では、日本企業に対する“遅れている”という印象の背景を整理し、実際の導入状況をデータで読み解いていきます。
- PwC調査で見えた“衝撃”:導入率は他国と変わらない
- なぜ「日本は遅れている」と思い込まれてきたのか?
それぞれ順番に解説していきます。
PwC調査で見えた“衝撃”:導入率は他国と変わらない
PwCが2025年春に実施した国際調査によると、日本の企業における生成AIの導入率は、米国・中国・ドイツ・英国と並ぶ水準の56%に達しています。対象となったのは、売上高500億円以上の大企業。つまり、テクノロジーへの投資余力もあり、戦略的な意思決定を担う層が対象です。

参照:PwC Japanグループ『生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較』p.13
※PwCとは、Price waterhouse Coopers(プライスウォーターハウスクーパース)世界最大級の総合プロフェッショナルサービスファーム。「四大会計事務所(Big4)」のひとつ。
この調査結果から見えてくるのは、「日本はまだ本格導入できていない」という一般的な印象と、実際の導入状況には大きなギャップがあるという事実です。日本企業もすでに“始めている”ため、導入という意味では、決して遅れてはいないのです。
なぜ「日本は遅れている」と思い込まれてきたのか?
それでもなお、「日本は遅れている」という見方が消えないのはなぜでしょうか。 その背景にはいくつかの要因が考えられます。
ひとつは、成果や成功事例が表に出にくい文化的・組織的な背景です。 欧米企業に比べて情報公開や発信の機会が少なく、外から見たときに進捗がわかりづらいという側面があります。
もうひとつは、「成果実感」が伴っていないことです。 つまり、導入自体はしているものの、明確な業務改善や売上へのインパクトといった“目に見える成果”を得られていない企業が多く、そのために社内外から「遅れている」と評価されてしまうのです。
この「見えない成果」と「伝わらない取り組み」が、日本企業に対するイメージを一段と曇らせているといえるでしょう。
AIで日本は成果を得ているのか?

生成AIの導入率において、日本は他国と遜色ない水準に達しているにもかかわらず、「期待したほどの成果が出ていない」と感じている企業が多いのが現状です。その背景には、単なる導入の有無では語れない、“活用の質”の違いがあるのかもしれません。
この章では、各国における「成果実感」の差をデータで比較し、日本企業が抱える課題の本質に迫ります。
- 各国の「成果を実感している企業」の割合
- 世界の中で、日本だけが“導入しても成果が出ない”国になっている
それぞれ整理していきます。
各国の「成果を実感している企業」の割合
PwCの調査では、生成AIを導入済みの企業のうち、「期待を上回る成果が得られた」と回答した割合に大きな国別格差が見られました。
特に米国・中国ではこの項目が3〜4割に達する一方、日本ではわずか10%程度と極端に低い水準にとどまっています。

参照:PwC Japanグループ『生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較』p.6
つまり、日本企業は「導入まではできている」が、「成果につなげる段階」で立ち止まっている状況がうかがえます。
世界の中で、日本だけが“導入しても成果が出ない”国になっている
導入済みでありながら、成果を感じられていない――このギャップが、日本企業に対する「AI活用が遅れている」という評価につながっていると考えられます。
他国では成果実感が生まれ、取り組みが加速するのに対し、日本は導入段階で止まりがちです。結果として「PoC(試行導入)の壁」を越えられず、本格運用に至らない企業も多いのが現状です。
この“成果の乏しさ”こそが、日本企業がAIに対して抱える最大の課題の一つといえるでしょう。
成果を分けたのは、導入方法ではなく「向き合い方」

生成AIの導入が進んでいるにもかかわらず、日本企業では「期待を上回る成果」を得られていないという現実があります。では、その成果の差は一体どこで生まれているのでしょうか。
この章では、成果が出ていない企業と出せている企業の“生成AIとの向き合い方”の違いに注目し、成果格差の本質をひもといていきます。
- 成果が出ない企業は、生成AIを“業務の効率化ツール”としてしか使っていない
- 成果を出す企業は、「AIがいる前提」で業務そのものを作り直している
一つ一つご紹介していきます。
成果が出ない企業は、生成AIを“業務の効率化ツール”としてしか使っていない
PwCの調査では、「成果を出せていない企業」の多くが、生成AIを既存業務の一部を置き換える“効率化ツール”として活用している傾向があることが示されています。たとえば、「報告書の要約」や「社内資料のたたき台づくり」など、比較的スコープの狭い用途にとどまっているケースです。
もちろん、こうした業務への活用も一定の価値はありますが、それだけでは業務全体のインパクトや、ビジネスモデルそのものを変えるほどの成果にはつながりません。「小さく使うこと」に留まっていることが、AI活用の可能性を制限してしまっているのです。
成果を出す企業は、「AIがいる前提」で業務そのものを作り直している
一方で、成果を出している企業は発想が根本的に異なります。彼らは、AIをあくまで“補助的なツール”としてではなく、「AIがチームの一員として存在している」前提で、業務設計そのものを再構築しています。
たとえば、顧客対応フローをAI主導に置き換える、商品開発プロセスの意思決定支援にAIを組み込む、など、AIの能力を前提に、業務の流れや分担の仕方をゼロベースで見直しているのです。
こうした企業では、単なる時間短縮やコスト削減ではなく、新たな価値創出や競争優位の構築にまでつながる変化が生まれています。このように、生成AIをどう“位置づけるか”によって、得られる成果には大きな開きが生まれているのです。
“PoCの壁”を越える、4つの変革

生成AIの導入が進んでいるにもかかわらず、多くの日本企業が「成果が出ない」「現場に定着しない」といった課題に直面しています。その原因の一つが、“PoC(概念実証)の壁”です。限られた部署・用途での試験導入にとどまり、全社展開や本格的な業務変革につながらないケースが数多く見られます。
この章では、この「PoCの壁」を越え、生成AIを業務全体に定着させるために必要な4つの視点を整理します。
- ① 経営トップが自ら推進する体制をつくる
- ② 専任の責任者を置く(CAIOの設置)
- ③ 業務全体のやり方を、AIがいる前提で組み替える
- ④ 従業員にも成果を還元し、安心して使えるルールを整える
一つ一つご紹介していきます。
① 経営トップが自ら推進する体制をつくる
生成AIの活用は、現場任せにしていては前に進みません。生成AIは単なるIT導入ではなく、企業の在り方そのものを変える経営課題です。
成功している企業では、「社長直轄プロジェクト」として推進しているケースが多く見られます。
◆どう作る? ── 3つのアクション例
- 社長名で社内にAI推進の方針を発信する(社内報や全社説明会など)
- 「社長室付きAI推進チーム」など、直属の小チームを編成し、週1回のレポートを受ける仕組みを作る
- 社内向けだけでなく、社外にも取り組みを発信(PR/採用ブランディング/パートナー企業向け)
- AIメンター制度を入れる(AI活用している若手社員がAIメンターとして社長や役員にAI活用術についてレクチャーする)
これにより、「本気度」が社内外に伝わり、現場の自発的な動きが加速します。
② 専任の責任者を置く(CAIOの設置)
「AIは大事だけど、誰が責任者かわからない」──そんな曖昧な状態では前に進めません。
成果を上げている企業は、CAIO(Chief AI Officer)という役職を設け、全社横断の司令塔を明確化しています。
◆どう作る? ── 社内と外部、2つのルート
- 社内から任命する場合:
- IT・業務・経営の3領域にまたがる経験者を抜擢
- 管理職とは別の“特命プロジェクト扱い”で権限と裁量を付与
- 外部から迎える場合:
- 外部パートナーと顧問契約を結び、週1回の作戦会議・制度設計・教育支援まで伴走
- 外部の知見と第三者視点で、ボトルネックを見抜き変革を支援
「社内に最適人材がいない」「客観的な視点が欲しい」という場合、外部CAIOの活用は極めて効果的です。
③ 業務全体のやり方を、AIがいる前提で組み替える
多くの企業は、AIを「既存業務の中で使えるところだけに適用」しています。
しかし成果を出している企業は、「この業務、そもそも人がやるべき?」というレベルから再設計しています。
◆どうやる? ── 業務設計の見直しフレーム
- 【棚卸し】業務を「判断系/処理系/創造系」に分類
- 【リデザイン】“AIと人の役割分担”をゼロベースで設計
- 【自動化計画】AIの活用対象をPoCせずにいきなり常用で運用(例:問い合わせ回答、議事録起こし、請求チェック)
たとえば:
- 営業部門: 提案資料はAIが下書きを作り、営業はカスタマイズに集中
- カスタマーサポート: 定型問い合わせはAI対応し、人は例外対応に注力
- 人事: JD(職務記述書)や面接評価コメントの一次草案をAIが作成
こうした業務再設計が、成果の“質と幅”を大きく変えるのです。
④ 従業員にも成果を還元し、安心して使えるルールを整える
AI活用に消極的な現場の空気が流れている会社もあると思います。
実は、その消極的な雰囲気の多くは「使っても評価されない」「むしろ自分の仕事が減るだけ」という不安から来ています。
◆どうやる? ── 現場の“納得感”を育てる仕組み
- AI活用で生まれた時間の使い道を、会社が用意する
- 例)社内勉強会、提案活動、ジョブローテーションなど
- 「AI活用件数」や「自動化率」を評価指標に組み込む
- 社内ルールを整備し、誤用や責任の不安を払拭
- チャットログの保存、自動分類、チェック体制など
従業員が「安心して使える」状態を整えなければ、どれだけ技術があっても活用は広がりません。
よくある質問|生成AI導入に関する疑問に答えます

生成AIの導入に関して、現場からよく聞かれる疑問や不安にお答えします。この章では、実際に検討・推進されている方の視点に立って、よくある質問をまとめました。
Q1. うちの会社のような中堅企業でも、生成AIで成果を出せるのでしょうか?
はい、企業規模に関係なく成果は出せます。重要なのは「AIとどう向き合うか」です。最初から大きな投資をする必要はなく、小さく始めて、業務ごとに最適な形へ広げていくことが成果につながります。
Q2. なぜ日本では、生成AIを導入しても成果が出にくいのですか?
主な原因は、「導入=ゴール」になってしまっていることです。生成AIを“業務改善ツール”としてだけ使うと、部分最適で止まってしまい、本来の変革力を発揮できません。
Q3. 成果を出している企業は、具体的に何をしているのですか?
生成AIがいる前提で、業務の流れそのものを再設計しています。たとえば、顧客対応や商品開発の意思決定フローをAI主導に変えるなど、根本的な業務設計の見直しを行っています。
Q4. 「PoCの壁」って何ですか?なぜ乗り越えられないのですか?
PoC(概念実証)はAI導入初期の「お試し」段階をさします。多くの企業がこの段階から先に進めないのは、経営の関与が薄く、AI活用の全体設計やルール整備が不十分だからです。
Q5. CAIO(Chief AI Officer)は必要ですか?社内にいない場合はどうしたら?
生成AIの成果を出すには、全体方針を描く責任者が不可欠です。ただし、社内に専門人材がいない場合は、外部CAIOという選択肢もあります。
外部CAIOは、外部パートナーと顧問契約を結び、週1回の作戦会議・制度設計・教育支援まで伴走してくれる人材です。外部の知見と第三者視点で、ボトルネックを見抜き変革を支援を行います。
Q6. AI人材が社内にいないのですが、それでも始められますか?
はい、大丈夫です。最初から社内に専門人材が揃っている企業はほとんどありません。重要なのは、外部の知見を活かしながら、自社の業務に合った形でスモールスタートすることです。
Q7. まず何から手をつけるべきですか?
「AIに置き換えられる業務」ではなく、「AIが活きる業務」から考えるのがおすすめです。そのうえで、経営層の意思決定と業務設計の見直しをセットで進めていくと、PoCの壁を越えやすくなります。
まとめ|「日本は遅れていない」だからこそ、今ここで差がつく

日本企業はすでに、生成AIの導入段階においては海外と肩を並べる水準に達しています。にもかかわらず成果を実感できない企業が多いのは、活用の“深度”や“向き合い方”にこそ、次なる突破口があるからです。
本記事でご紹介したように、「PoCの壁」を越えて本格活用へ進むには、以下のような組織的な変革が求められます。
- 経営トップが自ら推進の旗を振ること
- 専任の責任者(CAIO)を置き、推進力と横断力を確保すること
- 業務のやり方を“AIがいる前提”で再設計すること
- 現場の不安を取り除き、成果を還元する文化とルールをつくること
これらはいずれも、生成AIを単なる“ツール”で終わらせず、企業の力に変えていくために不可欠なステップです。
ただし、「そうは言っても、社内で担える人材がいない」「全社の巻き込みなんて今すぐは難しい」 そんな悩みもまた、現実的な壁として存在します。そこで注目されているのが、外部CAIO(Chief AI Officer)という選択肢です。
たとえば Zept合同会社では、生成AI活用を業務レベルで具体化・実装する外部CAIOサービスを提供しています。
- 経営と現場をつなぐ「文脈設計」の専門家が伴走
- 部門横断で生成AIの活用テーマを抽出・優先順位づけ
- 実行フェーズではPoCにとどまらず「定着・成果化」まで支援
- 必要に応じて、社内育成・教育プログラムの設計も可能
外部人材だからこそ、「兼任ではできない役割」や「社内では言い出しづらい変革」を推進できます。
生成AIは、ただ“導入すれば勝ち”の技術ではありません。本当の成果は、「どう向き合い、どう使いこなすか」の先にあります。
「変えたいけど、動けていない」なら、いま外から専門家を迎えることが、変化の最短ルートかもしれません。
もし外部CAIOサービスにご興味がある方は、ぜひ下記もご覧ください。
【Zeptの外部CAIOサービスを詳しく見る】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000153712.html

Zeptは、中小企業、特に地方の中小企業にとって“人材不足”や“業務効率化”のミカタでありたいと考えています。AIを活用した研修やツール、社内定着のための支援など、「現場で本当に役立つ仕組み」を揃えています。
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